2009年3月8日日曜日
紀ノ川:有吉佐和子
● 1979/05[1953/08]
「解説:亀井勝一郎」より。
『
「紀ノ川」は1959年の1月号から5月号まで、婦人画法に連載した作品であり、単行本としてまとめられたのは同年6月である。
有吉さんにとっては、充分に時間をかけ、またのびやかな心で筆をとった記念すべき長編である。
そのことは何よりまず文章からうかがわれるであろう。
何が描かれるか、つまり作品の筋も大切にはちがいないが、全体をつらぬく雰囲気は、いかに表現しようとしたか、そのときの作者の心の持ち方と文章にあることを注目しなければならない。
ここには明治・大正・昭和と、三代にわたる家系の歴史がある。
有吉さんの筆は、すこしおも急いでいない。
緩慢に、しかもそれぞれの生命に愛情深く心を傾けている。
日本の作家にとって「家」を描くことh、ひとつの運命と言っていいかもしれない。
作家によってむろん異なるけれど、根本には自己を知る欲求があるのではないだろうか。
自己の生命の根源をさぐることによる自己解明と言ってもよい。
家とは様々の命がからみあった一種の深淵であり、そこに謎がある。
その謎を解きたいと思うからこそ我々は歴史に向かうのであり、そのときの歴史単位がつまり「家」である。
家を描くという行為のなかには、その家からの完全な脱出という願いとともに、自分の命の源にひそむ執念を擬視しつつ、それを筆で開顕することで鎮めたいといった思いもあるにちがいない。
「祟り(たたり)」があるからである。
作品に即して言うなら、この作品によって逆に作者は決定され、ここの描かれたものの亡霊を背負うということである。
』
読後感想案内
『
★ 有吉佐和子 「紀ノ川」
http://www3.ocn.ne.jp/~ariyoshi/sawako/reading/hana3.htm
★ 有吉佐和子さんのおすすめ小説
http://pocket1.net/osusume1.html
』
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