● 1994/10[1994/09]
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1993年11月、「自慢の和食を向井さんへ」とシャトルに積む宇宙料理の募集記事が新聞に掲載された。
「ユニークな日本の食文化を国際的に紹介し、NASAの宇宙食に和食を提案しよう」という趣旨である。
募集期間は25日間と短かったのにも関わらず、1,730通にも上る応募があった。
NASAの宇宙食はすでに百種類を越え、そのメニューも豊富である。
今では形態も国際線ジエット旅客機の機内食並みになり、オーブンで加熱したり、湯を注入して食べられるようになった。
飛行士はNASAの検査さえパスすれば、市販の保存食品も限られた量だけ持込ができる。
宇宙食には、
①.汁や粉が飛び散らないこと
②.きつい匂いを発しないもの
との制約がある。
このため、汁のそば、ウドンは原則的に不可能とされる。
NASAの宇宙食の製作手法はまだオープンになっていない。
NASAの宇宙食の基本的な条件は、「軽いこと」と「保存性が高いこと」だ。
スペースシャトルには冷蔵庫や電子レンジの調理設備がないので、37.7度で30日間以上の保存に耐えられなければいけない。
そのために「凍結乾燥(フリーズドライ)」、あるいは「加圧加熱殺菌(レトルト)」などの方法で加工することが必要である。
まず、応募のレシビの提案通りに調理した。
油を使っているものは「レトルト」、それ以外は「フリーズドライ」で加工した。
3回目の試食会は、宇宙料理を20品目に絞り、2月28日にNASA・ジョンソン宇宙センターのフード・ラボ(宇宙食研究室)で開いた。
特に注目されたのは、果物デザートの「旬の果物の幸せ煮」だった。
これは生の果物の味や香り、食感をそのまま活かしながら、保存性を高めるために、日本独自の超高圧処理法を使ったものである。
海底4万メートルの圧力に相当する「4千気圧」の超高圧を10分間かけるもので、日本もマルハを含めて2社しかもっていない加工技術だ。
NASAにもない食品加工方法が認められるかどうか不安もあったが、飛行士たちからは「ぜひとも果物が欲しい」という要望が強く、搭載が決まった。
スプースシャトルでは、新鮮な野菜や果物は最初の2,3日しか食べられないが、超高圧処理してあれば飛行中いつでも食べることができる。
日本の技術がアメリカの宇宙食の歴史に新たな一ページを開くことになった。
さらにこの中から入選の9品目が選ばれ、佳作の4品目とあわせた合計「13品目」がすべてNASAのチェックをぱすし、コロンビアに搭載された。
「和食を宇宙へ」の食品技術者たちの夢はかなえられたのだ。
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