2009年6月2日火曜日

北の共和国:畑正憲


● 1980/12



 石の上にも三年という。
 北の涯に十年住んでいたら、動物そして人、それからまた生きていく知恵などがどんどん増えてきて、みんな仲間になってしまった。
 石の上にも三年で、北の国に十年いたら、そろそろ共和国でもつくりましょうと提案するものが」いて、その日に「国」が出来てしまった。
 これは、世界最小の国の自由を求める闘いの軌跡である。






 「北の共和国」法

第一条  個人の尊重
 すべての国民は個人として尊重される。
 生命、自由および幸福追求に対する国民の権利については、どさくさまぎれで適当に考求処理しなければならない。

第二条  自給自足
 何人も鋭意努力して食料の確保につとめなねばならない。
 しかりしこうして、おいしいものは早いもの勝ちとする。

第三条  野生動物
 野生動物について通関税を取得してはならない。
 傷ついたものがあれば、すみやかに処置し、育成放流にこころがけなければならない。

第四条  社会の構成
 ここで国民と称するのは、人間さえ含まれるものとする。
 馬族、犬族、などなどすべての動物は、人間と親交を結んでやらねばならない。

第五条  プライバシー
 みだりに自分の生活を包み隠してはならない。
 たとえば猫族は、種族繁栄のために自らの行動を明らかにし、興味を有する変てこな人間への研究の資を提供すべきである。

第六条  大使の交換
 共和国に隣接する山野に住む動物族は、大使を常駐せしめるべきである。
 また、国民は、大使入国の際には、おムツを交換し、ミルクを与え、大切に扱うべきである。

第七条  公害
 他国の公害についても無関心であってはならない。
 狐族、狸族の交通遺児の取り扱いに留意し、結婚に至るまで世話をするべきである。

第八条  健康福祉
 すべての国民に乗馬を義務として課す。
 もはや草競馬に於いて、素人っぽい稚技を披露してはならない。
 専門家と仰がれる見識と技術を体得するべきである。





 中古本コーナーの棚にあった。
 1ドル50セント、すぐに買った。
 奥付をみると29年も昔の本。
 amazonで調べてみたら「¥1」とある。
 まるで価値のない本、送料をいただければ差し上げます、といった書籍。
 同じくらい古い本でもストリーを持つ文章が主体なら値段はつく。
 が、写真集では古くなればなるほど下落し、そしてタダになる。
 確かに、29年前の写真では、見せられただけでさほどに興味は沸かない。
 せいぜい、そんな時代もあったかな、といったところであろう。
 ここでは、それに最大級の敬意を払い、5稿分のスペースを提供することにした。



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