2009年10月12日月曜日

むかしのはなし:あとがき:三浦しをん


● 2008/02[2005/02]



 なにかを語り伝えたいと願うときは、きっとなんらかの変化が起きたときだろう。
 喜びか、悲しみか、驚きか、定かではないけれどとにかく、永遠に続くかと思われた日常のなかに非日常が忍び入ってきたとき、その出来事や体験について、だれかに語りたくなるのだ。
 だれでもいい。
 だれかに。

 ひとは変化する世界を言葉によって把握するものであること。
 どんな状況においても、言葉を媒介にだれかとつながっていたいと願うものであること。
 語られることによって生きのびてきた物語は、人々にそう伝えているように思う。
 話者の匿名性を保つこと。
 『むかしのはなし』と銘打って、こういう内容にすること。
 すべて、いま「昔話」が生まれるとしたら、と考えた結果である。
 「日本昔話」が、この本のなかでどう語り変えられたのか、お楽しみいただけたなら嬉しい。









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