:だんだんわかったetc
● 1992/07
『
少しくたびれたスーツを着たおじさんが
僕の席の横を通ってレジに行く時、
なんだかうれしそうに独り言を呟いたのが聞こえた。
「だんだんわかった‥‥‥。」
ぼくの耳にその日一日
「だんだんわかった」がこびりついた。
僕は家に帰って「だんだんわかった」のおじさんを推理した。
そしてそれは”だんだんわかった”のだった。
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受け取り人のない手紙をかかえ込んだポスト
自分が思っているより他人は何も思っていないという事の典型的な朝だった。
何か他とは違う、
確実に他とは違う一つのものをその意識の中に持ちえていたならば、
きっとそれは、
こんな、あんな社会の中のつぶされそうな一粒でも、
絶対に、
「それはしめた!ものなのだ」
ろう。
繰り返して書く。
「絶対にそれはしめた!ものなのだろう」
って。
』
本は「あとがき」から読んだ方がいい。
でないと、本文の中で迷子になってしまう。
【忘れぬように、書きとめて:: 2009目次】
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