2009年1月26日月曜日

:平均寿命の話


● 1997/05



 戦前は果たして平均寿命は何歳ぐらいだったのか平山先生(国立がんセンター)にたづねてみると、最初に記録されたのは明治24年から31年で、その当時の記録を示してくれた。
 男‥‥42.8歳
 女‥‥44.3歳
とある。

 昭和十年をすぎた頃からわずかに「五十歳」を越す数字がみられるようになってくる。
 「人生五十年」という言葉が、実感として意識された。
 現在では想像もつかないが、五十歳まで生きられれば、一応「不服もない」ということなのだろう。

 日本が敗戦を迎えた年、平均寿命は
 男‥‥23.9歳
 女‥‥37.5歳
という驚くような数字が記録されている。

 戦時中、三十歳が「老兵」といわれたことも、四十五歳以上の男が老幼婦女子の「老」の部類に入れられ非戦闘員にされたのも、23.9歳という男の平均寿命から考えると、至極当然のことであったことに気づく。

 男の平均寿命が70歳に達したのは昭和46年で、女は11年前の昭和35年に早くも70歳を越えている。

 男女は六十歳になると、暦があらたまって人生をもう一度やり直す新生の年齢だとして「還暦」に達したと称される。
 さらに七十歳に達すると、「古希」と言われた。
 「古来稀:こらいまれ」なる長寿ということである。

 今や60歳は老人とは言いがたい。
 そのような年で死亡した人は、若死にも似た印象さえ受ける。
 また、70歳は「古来稀なる長寿」などとはとても言えぬ。
 
 私の祖父は42歳で死亡した。
 私の現在の年齢よりも8歳若い。
 父の死亡年齢(53歳)も3年後に迫っている。
 戦前の常識から言えば、私の年齢は死を迎えても不思議のない年齢である。

 私はまだ若い部類に入っていると思っているが、四十歳になるかならぬ頃、バーで若い女に「オジサン」と言われ、一時に酔いのさめる思いをした。
 さらに昨年、地方都市の郷土料理店の女に「オトウサン」と言われ、もういけない、と思った。

 平均寿命は伸びているのだ。
 五十歳にならぬ男に、昔風の呼び方はやめてもらいたい。
 せめて「オジサン」程度にとどめて欲しい。





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