2009年1月28日水曜日

だんだんわかった:仲井戸麗市


● 1992/07



 単行本を出せるなんて、様々な思いでいっぱいだ。

 何を書いてもいいし、何を書かなくてもいい、といった呑気なことではない。
 これは俺の仕事の一つだからだ。
 仕事なのだ。
 何かは書ききれないし、何かは書き過ぎてしまう。
 「書くのだ」。
 あふれてこぬものを、「しぼり出してでも」。

 昔から同じっていうのが嫌いだった。
 それは生理でもあるし、精神でもある。
 何ものにも属さないのが好きだったし、好きだし、好きのままであろうと思う。
 こんな時代にゃまさか、無国籍などを勿論願っちゃいない。
 みんな居場所を探して必死なのであるから、そんな幼ないたわ言は言ってられない。

 何かを語るには「体験」こそが説得力をもつ。
 社会的レベルの面した学術的分析など無意味以下だ。
 俺にはだ。
 文字通りの体験、そして未知への空想としての体験だ。
 その思いが、この単行本を書き綴る上での絶対的な材料となった。
 キーワードには、千変万化新宿の街、そしてビートルズがあった。

 次に進むための一つの区切りとして、自分にとってのある日々を一冊の本に詰め込んだ。
 本文の一人称は迷ったが、結局「僕」にした。
 あとがきは「俺」にした。
 いつか「私」とも出会ってみたい。

 中学、高校の頃、大人になれば何かが解決するものと思っていた。
 とんでもなかった。
 「もっともっとやっかいな毎日」が待っていた。

 この「あとがき」ってやつを書くのが‥‥待ち遠しかった。
 自分の単行本が本当にあるかどうか、明日本屋さんにそっと行ってみるのだ。

 


 この人、これまで知らなかった。
 YouTubeで見たがクラシック・ギターを弾かせたらいい腕だ。
 クラシック・ギターのアルバムは出ているのだろうか。  


 この本の後ろに挟まれていた1992年5月6月の「TBSブリタニカ」の新刊案内










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